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ポリヴェーガル理論/ トラウマに身体が過剰反応するしくみ

 ポリヴェーガル理論

 トラウマに身体が過剰反応するしくみ

 カウンセラーのまとめ用として書いています。

 随時書き直しもしていく予定です。

ポリヴェーガル理論のおおまかな内容

ポリ(複数の)ヴェーガル(迷走神経)の理論

つまり、複数の迷走神経についての理論

迷走神経とは脳神経の1つであり、副交感神経として働いている。

迷走神経は1つでなくて2つあった。(古い迷走神経新しい迷走神経

今まで自律神経というのは、交感神経と副交感神経がバランスをとっているものと考えられていた

けれどそれではさまざまな体の反応について説明がつかない、とも言われていた。

迷走神経(副交感神経)が2つあると分かり、それが別々の働きをする古い迷走神経新しい迷走神経であると分かってきた。

ここから自律神経新しいものから順番に段階をおって働いているという結論に至り、今では多くのセラピストに受け入れられている。

1.新しい迷走神経

2.交感神経

3.古い迷走神経

この順に働いている。

安全な状況では、新しい迷走神経が、交感神経と古い迷走神経を制御している。危険を感じると交感神経古い迷走神経の順に無意識に反応する。

神経について

神経は中枢神経末梢神経に分けられる

中枢神経 脳と脊髄

末梢神経 それ以外の神経(脳神経、脊髄神経、体中に分布する神経)

※ 脳神経や脊髄神経は、脳や脊髄から出ている末梢神経のこと

末梢神経には運動神経感覚神経がある

 運動神経 脳(脊髄)から出発して体中へ伝える

 感覚神経 体中から脳(脊髄)へ感覚を伝える

自律神経は、交感神経副交感神経(迷走神経)末梢神経の1つ。どちらも末梢神経なので運動神経(出る)感覚神経(戻る)がある

交感神経は、脊髄の両横に2本あり、たて長に伸びている

副交感神経(迷走神経)は、脳の脳幹に出入りしている脳神経

新しい迷走神経は、脳幹の疑核(ぎかく)から

古い迷走神経は、脳幹の背側(はいそく)運動核から出発する

どちらも、脳幹の孤束核(こそくかく)へ戻る

新しいほう腹側迷走神経経路古いほう背側迷走神経経路と呼ぶこともある

新しい迷走神経は、有髄化されていて横隔膜より上の臓器(心臓や顔など)へとつながっている

古い迷走神経は、無髄で横隔膜より下の臓器(胃や腸など)一部は心臓へとつながっている

※ 無髄はゆっくり、有髄は速く伝わる

進化から見た、危険への反応

1.古い迷走神経は昆虫や爬虫類のイメージ(不動化)

昆虫や爬虫類が命の危険を察知した時には、止まる、動かなくなる、など死んだふりのような状態になる(バッタやトカゲ、カメなど)

これは古い迷走神経が働いて起こるもの

ネズミやシカなども、命の危険を感じると死んだふりをする。

人が命の危険を感じると動けなくなったり、失神解離などを起こすのも、この神経の反応によるもの

2.交感神経は小さな動物のイメージ(可動化)

ネズミなどは危険を感じると逃げるか戦うか、というように活発に動くようになる

人も危険を感じた時には、無意識に逃げようとしたり、相手に激しい言葉を浴びせようとしたりする

3.新しい迷走神経は人のイメージ(協働調整)

人など妊娠や子育てに時間のかかる動物は、逃げる、戦うだけでは危険に対応できないため、周りの人と共に過ごす必要が出てきた。

そのため古い迷走神経交感神経を制御すること、安全を確認する「合図」を交わすことに関わる新しい迷走神経を発達させた。

新しい迷走神経を働かせることにより、相手の表情や声などから状況を判断して危険を回避することが出来るようになった。

※ 危険を察知する回路は研究されてきているが、安全かどうかを判断する回路についてはまだわからないことが多い

それぞれの神経の働き(日常)

1.古い迷走神経

命に危険が及ぶような状況では、古い迷走神経が心臓の動きを遅くする(徐脈)呼吸を遅くする(無呼吸)痛みや感情を感じなくする(麻痺)などに働くため失神、解離などが起こる。

安全を感じられている日常では、新しい迷走神経に制御されており体を休めているリラックス状態へと導く。(体内の臓器は消化や回復のために働く)

2.交感神経

体が危険を察知している状況では、逃げるか戦うか、というように極端に体を活性化して動かす。

安全を感じられている日常では、新しい迷走神経に制御されておりさまざまな活動へ向けて働く。

3.新しい迷走神経

表情や声を使って交渉してみても危険だと読み取ると、新しい迷走神経は働かなくなり、交感神経や古い迷走神経が優先して働き出す。

安全を感じられている状況では、表情や声などを通してお互いに合図を取りつつ、交感神経を働かせてさまざまな活動をしたり、古い迷走神経を働かせて休んだりする。

トラウマへの身体の反応

トラウマは危険を感じた時に無意識に交感神経古い迷走神経が働いた結果として生まれると考えられる。

そのためトラウマと似た状況になると、体が反射的に交感神経古い迷走神経を働かせてしまう。(無意識なので意識ではどうにもならない)

トラウマを受けた時には、交感神経を働かせて無理にでも逃げ出したり、立ち向かおうとすることで身を守ることができた

古い迷走神経についても、逃げ場のない状況で体を動かさない、感じないようにすることで、被害を最小限にして身を守ることができた

それほど危険な状況でなくても体が勝手に反応してしまうことについて、自分はおかしくなった、自信がないからだ、自分は弱い、何もできない、、というふうに考え、自分を責めたりしてしまうことが多い。

だけど、これは体が無意識に働いた結果のことなので、自分を責める必要はない

トラウマで困ること

トラウマの回数が多かったりショックが大きかったりすると、人の行動や表情しぐさなどいろんなことが危険の信号になってしまう。

この場合、交感神経が常に働いて、新しい迷走神経による耳の筋肉の調節がうまくいかなくなり、人の話を聞きとれなかったり聴覚過敏になる。(危険な音を聞き取るほうへ中耳の筋肉を使うため)

新しい迷走神経による顔の筋肉の調節がうまくいかなくなると、表情がなくなってしまうため、相手から勘違いをされることが多くなる。(相手を嫌っている、無視している、見下しているかのように受け取られる)

言葉で否定する、ダメ出し、比べるなど否定的な価値観を押しつけられたり聞かされ続ける場合も同じ。

その場合、状況に適応しようとするために、自分には価値がない、何もできない、弱い、大事にしてもらえない、幸せにはなれない、などのような考えを作り出し、何とかやり過ごすこともある。

その後も同じ価値観で生きようとするため、自分から辛いほう、苦しいほう、孤立するほうを選んでしまうことになりやすい。

古い迷走神経が反射的に働いて、感覚や気持ちの麻痺・解離が起こるのは防衛反応として身を守るほうへと働いてくれているのだが、感覚や気持ちの麻痺・解離状態から戻るしくみがないために身体の感覚を取り戻すのがとても難しい

この状態が続くということは、安全でない、人を信頼できない状態が続くということでもある。そういう状態に何かしら複雑な理由をつけないと自分を保てないため、人を愛したり、信頼したり、自由に交流したりしないことを正当化しようとしてしまう

危険信号を日々感じていたり、感覚や気持ちの麻痺・解離の状態でいると、新しい迷走神経が働かないままで過ごすことになるため、他の人が何を感じているのか、その「合図」を読み取れなくなる

健全な人の「合図」を感じ取ることが難しいため、いわ感を感じるような言動や行動をする人がいても距離を取ろうとせず、過剰な要求を受け入れてしまい、付けこまれることがある

トラウマとの関係も疑われる病気や症状

病気はさまざまな要因があって起こるものなので、トラウマだけが原因で起こっているとは言えないが、トラウマによる自律神経の不調が病気の原因に関係しているとも考えられる。

過敏性腸症候群線維筋痛症肥満その他の胃腸の障害セックスレス

これらは古い迷走神経の制御がうまくいっていないことも原因の一つとして考えられる。

高血圧症、睡眠時無呼吸症候群、糖尿病などの合併

一つの症状だけでなく合併している場合、新しい迷走神経の制御がうまくいかず心肺機能が弱っている可能性も考えられる。

恋愛やセックス、愛着について

恋愛やセックスが健全なものであるかどうか、そこには愛着の形成がとても大切である。

愛着の形成には大まかに2つの段階があり

1つ目の段階として、「安全である」という感覚のもとに互いに交流して、どの程度の近さがお互いに心地よいか調整しあう。

そして2つ目の段階に、身体的な接触と親密さがくる。

この段階で進めた場合、健全な愛着が自然に形成される。

トラウマを抱えた人は日常に安全を感じられていないため、1つ目の段階をとても難しく感じる、人によっては不可能とさえ考えてしまうことも少なくない。

トラウマを抱えた人は、新しい迷走神経の働きを抑えられているため、感覚を感じにくくなっており、強い刺激がないと快感を感じられない

安全を感じて過ごしている人は、新しい迷走神経働いているため、日常生活においても快感を感じることができ、より創造的、積極的なほうへと進みやすくなる。

いつも動き続けて自分を危険にさらしていないといけないという人は、創造的、積極的というよりも、何もできない麻痺状態に戻らないために、絶えず神経を刺激し続けている状態と考えられる。

トラウマを抱えた人に育てられた場合

親がトラウマを抱えていて、危険信号を感じながら生きている場合、子どもは安全や危険の「合図」を健全ではない形で読み取ってしまう可能性がある。

例えば、トラウマを抱えている人は自分の感情も他人の感情も苦手なために、子どもが楽しそうにしたりさまざまな感情を出すと怒られる、そのため感情を出すことはいけないことだと受け取ってしまう。

感情を表現することすらいけないのだから、人に伝えるなどあり得ない、ということにもなりかねない。

トラウマからの回復

安全を感じられる環境を作る

環境における不快な音を減らす

周りの人の理解を得る

安全を感じられる関係性を作る

安全な環境安心できる人とのやり取りを体験する(心理カウンセリングを含む)

健全な愛着を形成する

健全なパートナーとのやりとり、心理セラピー

危険に対する反応を減らす(弱める)

心理セラピー

身体の感覚を戻す

心理セラピー、ヨガ、一部の瞑想など

考え方のゆがみを戻す

心理カウンセリング、自分を責めない

大まかであるがこれらが考えられる。

心理カウンセリングやセラピーは効果的であると考えられるが、大事なのは本人が安全であると感じられるかどうかなので、安全や安心を感じられるカウンセラー、セラピストであるかを重視して探してみてほしい。

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