気持ちを察しすぎて疲れてしまう方へ
~察したあと、どう考えて過ごすか~

相手が何も言っていないのに
「何かあったのかな」
と気になってしまう。
パートナーの返事が
いつもより少しそっけないだけで
「怒ってるのかな」
「私が何かしたのかな」
と考えてしまう。
子どもの表情が少しでも暗かったり
人がつらそうにしていると
自分まで気持ちが重たくなってしまう。
そんなふうに
相手の表情や声の調子
ちょっとした態度の変化から
気持ちを察しすぎて疲れてしまう。
「人の気持ちに敏感だから」
「共感力が高いから」
そう考えることも
できるかもしれません。
でも、カウンセリングで
お話を聞いていると
それだけではないように感じることがあります。
子どもの頃から
親の機嫌を気にしてきた。
怒っているのか
機嫌がいいのか
今話しかけても大丈夫なのか。
そんなことをいつも気にしながら
過ごしてきた方です。
自分から人の気持ちを
気にするようになったというより
そうしなければ
安心して過ごせなかった。
だから大人になった今も
気づかないうちに
相手の気持ちや機嫌に意識が向いてしまう。
そうやって
気持ちを察することが
当たり前になってしまうこともあります。
気づくと、いつも相手の気持ちを見ている
子どもの頃から
親の機嫌を気にしていると
相手の表情や声の調子
ちょっとした態度の変化に
自然と意識が向くようになります。
これは
「相手の気持ちを読もう」
と意識して
やっているわけではありません。
気づいたときには、
「怒っているのかな」
「何かあったのかな」
「私が何かしたのかな」
と考えています。
そして大人になってからも
その感覚が
自然と続いてしまいます。
パートナーに少し元気がない。
子どもの表情が暗そうに見える。
職場の人の返事が
いつもよりそっけない。
誰かがため息をついた。
そんな小さな変化にも
自然と意識が向いてしまいます。
そして
相手の機嫌が悪そうだと
「どうしたんだろう」
「何かしたほうがいいかな」
と考えはじめてしまう。
相手が何も言っていないのに
その人の気持ちを
ずっと考えてしまうこともあります。
人の気持ちを察すること自体が
悪いわけではありません。
ただ
周りの人の状態に
いつも意識が向いてしまっていると
自分が本当はどうしていたいのかが
わかりにくくなってしまいます。
相手を何とかしてあげたくなる
大切な人が苦しんでいたら
何とかしてあげたい
と思うのは自然なことだと思います。
でも
相手の気持ちを察することに
意識が向きすぎると
「何とかしてあげたい」
から
「何とかしなければ」
に変わっていくことがあります。
落ち込んでいるパートナーを励ます。
悩んでいる子どもに解決方法を教える。
「そんなふうに考えなくても大丈夫だよ」
と伝えて
相手の考え方を変えさせようとする。
できるだけ嫌なことが起きないように
先回りして動く。
もちろん、そこには
相手を大切に思う気持ちがあります。
ただ、その一方で
相手がつらそうにしている姿を
見ていることに
自分自身が耐えられなくなっている
こともあります。
相手の苦しさを
なくしてあげたい気持ちと
相手の姿を見て
苦しくなっている自分を
何とかしなければ。
この二つが
混ざってしまうことがあります。
人の気持ちばかりを見ていると
テレビで事故や災害のニュースを見るだけでも
その人や家族の気持ちを
想像してしまい
しばらく引きずってしまう方もいます。
目の前にいる人だけではなく
誰かの苦しさを感じると
自分の中にも
何か重たい感じが広がってしまう。
そのくらい
人の気持ちに意識が向きやすく
なってしまうこともあります。
家族が気持ちを見せなくなることもあります
こうしたことが続いていると
パートナーや子どもの側にも
変化が起こることがあります。
「つらいと言うと心配させてしまう」
「悩んでいると言うと
すぐに何とかしようとしてくる」
「落ち込んでいると
元気になるように言われる」
相手がそう感じるようになると
本当はつらくても
「大丈夫だよ」
と言うようになることがあります。
家の外では
気持ちを出せているのに
家族の前では
元気そうに振る舞うこともあります。
これは
どちらが悪いという話ではありません。
心配する側も
相手を大切に思っている。
気持ちを隠す側も
相手を心配させたくないと思っている。
お互いを思っているのに
少しずつ本当の気持ちを見せにくい関係に
なってしまうことがあります。
相手の気持ちと、自分の気持ちを分けていく
人の気持ちや機嫌に
振り回されてしまうときに大切なのは
人の気持ちを
察しないようになることではありません。
相手が悲しんでいるのを
何とも思わない人になることでもありません。
まず必要なのは
相手の気持ちと
自分の中に生まれた気持ちを
少しずつ分けて見られるようになることです。
「この人は今、つらいんだな」
そして
「その姿を見て
私は不安になっているんだな」
この二つは
同じものではありません。
相手には相手の気持ちがあり
自分には自分の気持ちがあります。
その違いが
少しずつ見えるようになると
相手が落ち込んでいるからといって
すぐに
元気にさせようとしなくてよくなります。
そしてもう一つ
大切なことがあります。
相手が
本当にどう思っているのかは
本人に聞かなければわからない
ということです。
表情が暗いからといって
怒っているとは限りません。
返事がそっけないからといって
自分に不満があるとは限りません。
相手の変化に気づいても
「きっとこう思ってる」
とすぐに答えを出さないでいられるようになってくると
相手の気持ちに
振り回されにくくなっていきます。
自分の気持ちを、そのまま抱えていられるようになる
そこで大切なのが
自分の中に出てきた
不安や苦しさを
すぐになくそうとしないで
いられるようになることです。
「心配だな」
「怖いな」
「何とかしてあげたいな」
そう感じている自分を
良いとも悪いとも決めずに
見ていきます。
不安がなくなるまで考え続けて
答えを出そうとするのではなく
不安があっても
そのまま少し過ごせるようになる。
それができるようになってくると
相手の気持ちについても
同じことができるようになっていきます。
パートナーが落ち込んでいても
「今はつらいんだな」
と、そのままそばにいられる。
子どもが悲しんでいても
すぐにその悲しみを取り除こうとせず
悲しんでいる時間を一緒に過ごせる。
相手の気持ちを感じないようになるのではなく
相手の気持ちを感じながらも
自分は自分でいられるようになる。
そこを目指していきます。
考え続けていると、自分の気持ちがわからなくなる
ただ
「自分の気持ちを
そのまま見ていましょう」
と言われても
なかなかできない方もいます。
それは
頭の中がいつも忙しいからです。
今起きていることへの不安。
これから起こるかもしれないことへの不安。
過去にしたことへの後悔。
「あれでよかったのかな」
「違う言い方をすればよかった」
という自分責め。
こうしたことをずっと考えていると
頭の中に余裕がなくなってしまいます。
すると
「自分は今
どう感じているんだろう」
と、自分の気持ちに意識を向ける余裕も
なくなってしまいます。
そのためカウンセリングでは
気持ちを探そうとするだけではなく
まず
考え続けないでいられる時間を
少しずつ作っていくこと
も大切にしています。
「正しい答え」を探し続けなくてもいい
考え続けてしまう方の中には
「これは正しいのか、間違っているのか」
「自分の考えは合っているのか、おかしいのか」
「こうしたほうがいいのか、しないほうがいいのか」
と、物事を白黒はっきりさせようとする方が多いです。
答えが出れば
少し安心できるからです。
人の機嫌が気になるときにも
「怒っているのか、いないのか」
「自分のせいなのか、そうでないのか」
「何かしてあげたほうがいいのか、そうでないのか」
答えを出したくて
考え続けてしまうことがあります。
でも実際の人間関係には
すぐには答えが出ないことも
たくさんあります。
相手がなぜ
機嫌が悪そうなのかわからない。
この先どうなるのかわからない。
今は何をしたらいいのかわからない。
そんなとき
無理に答えを出そうとするのではなく
わからないことを
わからないまま
少し置いておけるようになること。
それができるようになると
考え続けることが減り
自分の気持ちをみる余裕もできてきます。
その結果
自分の気持ちと
相手の気持ちを分けて見やすくなります。
今まで自分を守ってきた鎧を、少しずつ脱いでいく
ここまで読んで
「だったら
人の機嫌や相手の気持ちを
考えたりするのを
やめればいいということ?」
と思うかもしれません。
でも、それは簡単なことではありません。
子どもの頃から
相手から怒られないように察する。
問題が起きる前に考える。
相手がつらくならないように先回りする。
そうすることで
自分を守ってきたからです。
それは長い間
自分を守ってくれていた
鎧のようなものだったのかもしれません。
その鎧を脱ぐことは
楽になることだけではありません。
「これをしなくなったら、どうなるんだろう」
「何を頼りにすればいいんだろう」
そんなふうに
とても不安になるかと思います。
今までのやり方を手放すことは、
どうすればいいかわからない場所に
急に放り出されるような感じに近いです。
だからこそ
一気に変えようとする必要はありません。
一人で急いで変えなくても大丈夫です
カウンセリングでは
「もう人の機嫌を
気にしないでください」
とお伝えするわけではありません。
今までしてきたことにも
その人なりの理由があります。
だから
今この状況ではどう過ごしたらいいのか。
相手に何かしてあげたほうがいいのか。
それとも、今は見守っていていいのか。
自分の中に出てきた不安を
どう捉えたらいいのか。
その時その時に起きていることを
一緒に確認しながら
どうするかを考えていきます。
そうしながら少しずつ
考え続けなくても大丈夫だった。
相手の機嫌が悪そうだったけど
自分が何とかしなくても大丈夫だった。
すぐに声をかけたりしなくても
関係は壊れなかった。
そんな経験を重ねていきます。
今まで自分を守ってきた鎧を
無理に脱ぐのではなく
「ここでは少し脱いでも大丈夫かもしれない」
と思えるところから
少しずつ変えていく。
そうしていくことで
相手の気持ちを大切にしながら
自分の気持ちも
大切にできるようになっていきます。
人の気持ちを感じやすい自分を
なくす必要はありません。
相手の表情が曇っているときにも
「何かあったのかな」
と思いながら
すぐに答えを出そうとせずにいられる。
相手がつらそうなときにも
「つらそうだな」
と感じながら
その気持ちに飲み込まれずに
そばにいられる。
そして自分の中に不安が出てきても
すぐに何とかしようとせずに
その気持ちを抱えていられる。
そんなふうに変わっていくことで
人の気持ちを感じることそのものが、
今までほど苦しいことではなくなっていきます。
関連ページ
人の機嫌が気になると
「怒ってるのかな」
「自分が何か間違えたかな」
「何か言ったほうがいいかな」
そんなふうに
考え続けてしまうことがあります。
その背景には
物事を正しいか間違いかで考えたり
あいまいな状態のままでいることに
不安を感じやすかったりすることがあります。
そのような方は
こちらのページも参考になるかもしれません。
また
相手の表情や機嫌に
自然と意識が向いてしまうことには
子どもの頃から
親の機嫌を気にしたり
周りに合わせたりして過ごしてきたことが
関係している場合もあります。
「特別につらい家庭だったとは思わないけれど
なぜかずっと生きづらかった」
そんな方は
こちらも参考にしてみてください。
ここまで読んで
「なぜ人の気持ちを
気にしすぎてしまうのか」
「なぜいつも考え続けて
しまうのか」
少しずつ分かってきた方の中には
これまでにも
本を読んだり
ネットで調べたり
自分なりに考えたりしながら
自分の生きづらさについて
向き合ってきた方もいるかと思います。
それでも
「頭ではわかってきたけれど
なかなか同じことをやめられない」
「自分のことは
少しわかってきたけれど
まだ何か違う」
「もう少し何かあるような気がする」
そんなふうに感じている方は
こちらのページをご覧ください。
